uraunyはこれまで展示やイベントの主催、ボードゲームの制作などを通して、既存のアートシーンには同化しない独自の芸術観で様々な実験を行ってきたアー ティストです。近しい友人すら本名を知らず、作品もあまりに謎な為に、僕も彼の全体像を把握するのに数年を要しました。
近年のuraunyは、ヒトの体液を蒸留し、フェロモン化した液体のベイプ「Human taste vape」、uraunyにとってネット感のあるオンライン上の素材(音楽、映 像、画像、テキスト)を業者にメール添付し、その情報の読み取りから精製された香水「internet parfum(Eau_de_Toilette)、1つの香水が数時間ごとに、幼児期 から老齢期までの体臭に変化する「AI parfum(Eau_de_Toilette)」、そして2020年5月に秘密裏に開催された招待制の展覧会「ダークアンデパンダン」で発表さ れた、摂取型作品■■■■など、他人の身体に介入する作品を作り、不気味なほどひっそりとそれらの発表を続けてきました。
本作 「urauny dinner」もまた、予約制レストランとして観客の体内にアプローチするプロジェクトとなります。ここで提供される料理の素材は、無添加の有機食 材などを使用した市販薬や化粧品です。 シアバター100%のリップクリーム、蜂蜜など粘着性のある糖類のみで作られた脱毛クリーム、海藻類だけで作られたローション、有機食材由来のマウスウォッ シュや歯磨き粉、涙に限りなく近い無添加素材の目薬……などなど、「食品として出回ってはいないが、食べられる商品」です。
作品として食事を振る舞うアーティストは無数にいますが、それを行うために彼らが観客に担保してきた深層心理的な安全性……「カレー」であるとか、「ギャラ リー」であるとかいった「既知」なもの……は、それが「何か」が一般的に良く知られているという前提の上に立つものでした。 対してuraunyが今回作り出すものは、全くの「未知」な食べ物です。uraunyは食文化を通して人類が未知から既知へと克服してきたその挑戦の過程そのものを、 芸術がそもそも携えている解けない謎への追求の姿勢と重ねているのかもしれません。
しかし、その未知なものを体内に入れる際の安全性は、商品の成分表示と、 uraunyという得体の知れない(風貌的にも怪しい)アーティストへの信頼(その為に食品衛生責任者の資格を取得し、自らそれらを食してきましたが…)、その2 つでしかありません。それをどう「信じる」か……、その究極の関係性の構築は、言うまでもなく近年のアートが装ってきた偽善的で、退屈な、「関係性」の表 層性を根本から問い直し、しかし「敵対性」ともまた違うベクトルでもって、当の「関係性の美学」のコア(核心)と向こう側を、一気に示すようです。
また、既知と未知の話でいうと、食においてその最大のアンテナである「味覚」に対しても、uraunyは問いを呈します。「美味しさ」はそもそも地域差や世代差 があるものであり、ヒトにとってどこまで種として絶対的な基準を持つものかはわかり得ません。知っている味を感じることで、安全であると認識することも多 分にあります。
uraunyはむしろ、積極的に既存の味とは違う未知の味を追求します。それを「不味い」と感じるか、「未知」と捉えるか。その反射的な反応は、 私たちの先入観を揺さぶり試すことでしょう。
さて、 「urauny dinner 」は、鑑賞にあたって、同意書への同意と予約フォームを手続きとします。作家は薬学者へのヒアリングと自身で食する事で安全を個人的 に確認してきましたが、それは社会的に担保されるものではありません。また、レストランの内装には、視覚的な刺激が非常に強い装置が使用されています。そ れらをご自身の責任で経験されるとご同意いただける方のみ、こちらからお入りください。
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皆さまのご予約をお待ちしております。 卯城竜太 また、本展覧会中は、キッチンとトイレへの立ち入りをご遠慮いただきますが、二階の常設展示(Chim↑Pomと卯城のコレクションと、ネオダダ関係の作品のビューイング。不定期で展示替え)と、その奥に保存されているネオダダの壁画はご覧いただけます。庭部分では、会員でなくてもどなたでもご利用いただけますカ フェ・バーが、4/10からスタートします。どうぞ皆さまお立ち寄りください。
卯城竜太(Chim↑pom)