この度、WHITEHOUSE「ナオ ナカムラ」では、時吉あきな個展『気になる中華料理店』を開催いたします。
時吉あきなは1994年大阪府生まれ。2016年京都造形芸術情報デザイン学科を卒業。
代表作とも言える原寸大の犬を立体コラージュで制作した作品『ワンオール』で2017年第16回グラフィック「1_WALL」のグランプリを受賞し、受賞作は「芸術に関心のない人でも巻き込まれる勢いを感じさせる」と審査員に評価され、同グランプリ受賞個展『ナンバーワン』(2018/ガーディアン・ガーデン)ではその言葉通り、一躍注目を集めました。
私の妊娠、出産を経てオファーから3年越しでの実現となる今展は、時吉にとっては5度目の個展ですが、ナオ ナカムラでは初個展です。
時吉は、対象物をスマートフォンであらゆる角度から撮影してコピー用紙に出力。記憶と感覚を元に新聞紙で原寸大に型取ったベースの上に木工用ボンドを使い立体コラージュしていきます。
超初期のCGアニメーションのような造形と、どこかの民芸品のような、子どもの工作のような、シンプルな材料と手しごとから生まれる作品は、立体を撮影して平面に出力し再び立体に再構築する点に加えて、時吉の理想や空想のストーリーを現実と織り交ぜて形容したり、対象物の感情や視点を取り入れるといった、デジタルとアナログ、2次元と3次元、リアルとフェイクの往来で生じる時空の歪みと写真同士の強引な継ぎ接ぎにより、本来の対象物よりも少々アンバランスながら妙なリアリティとユニークさ、写真と彫刻の間を突き進むようなフレキシビリティの高さが見て取れます。
何より、私が時吉に惹かれるのは、彼女自身が持つピカイチのセンスとユーモアに溢れるキャラクターもさることながら、鑑賞者との時間の共有をベースに置き、作品に対する過剰な意味づけや無闇な答えを見出さないその真っ直ぐな姿勢と、可愛さや面白さに留まらない、”愛しいものの分身”を感じさせる作品そのものの姿から、愛のこもったものづくりを感じさせてくれるところにあります。
今展は、時吉が小学6年生の頃に親戚と訪れた、気になる中華料理店がモチーフです。
店名や所在地など詳細は分からず、おぼろげで断片的な記憶だけが残りますが、「コマ送りでいつくかのシーンや会話を繰り返し思い出す」と彼女は言います。
先日、わずかな記憶と少ない情報を頼りにリサーチを重ね、ようやく辿り着いたあの中華料理店を時吉らしいエピソードとともに構成します。
まるで大昔にタイムスリップしたかのような、どこまでが真実でどこからが空想なのか、曖昧ながらも作品によってひとつずつ確かめるように辿る今展を時吉とともに皆様にも追体験していただけましたら幸いです。
こちらの中華料理店、12月3日から15日までの期間限定、営業時間は13:00-19:00、定休日は火曜日になります。
時吉あきなによる「気になる中華料理店」をこの機会にどうぞご覧ください。
中村奈央