WHITEHOUSE

 

芳賀菜々花

「前だけ見て進もう My Way」

【前半】

会期:2025年12月20日〜12月31日

15:00〜19:00

※金土日月のみ開廊
※WHITEHOUSE会員限定

 

【後半】

会期:2026年1月6日〜1月25日

15:00〜20:00

500円

※金土日月のみ開廊
※一般公開

【イベント】

1月6日:記者会見

1月20日〜1月25日 パフォーマンスイベント「牢」

(詳細は随時Instagramにて発表)
2500円+1drink

WHITEHOUSEでは、芳賀菜々花による初個展を開催いたします。芳賀は、身体性を基軸とした体当たり的かつ一見過激な表現によって近年注目を集めるパフォーマーです。本展は、芳賀にとって特別な場所であるWHITEHOUSEを舞台に、「アーティストになる」という行為そのものをパフォーマンスとして展示します。なお本展は二部構成となり、年内はWHITEHOUSE会員のみを対象とし、年明けからクロージングまでは一般公開といたします。

■ 作家について

芳賀はWHITEHOUSEの会員として、プレイベントからほぼすべての展覧会に足を運んできました。美大との接点はなく、リテラシーがほぼゼロのままWHITEHOUSEを通じてアートに出会い、そこで生まれた人的交流を通じて、全国各地のオルタナティブスペースやアーティストたちと関わりを深めてきました。その後、大学を中退。数年間にわたり非定住の放浪生活を経て現在に至ります。本展において作家は、WHITEHOUSEを会期中の定住地とし、場所との一体化を通して観客を迎え入れます。

芳賀がパフォーマンスを始めたのは、トモ都市美術館で開催された年越しイベント「TOMO年越美術館 2023-2024 いる派 PRESENTS 身体アンデパンダン24時」でした。ここで芳賀は《24時間、ワンチャン絞死する状況で過ごしてみる》を発表し、24時間台の上に立ち続け、首吊りの輪を首に通したまま睡眠と闘うという苛烈なパフォーマンスを行いました。
その後も、鎖を首輪に見立て犬のように振る舞う行為、BankARTで108人分の「今年一番しんどかったこと」を読み上げつつ全身に同数の点のタトゥーを入れる《Gimmie a fix, Kiss you》パフォーマンス、風倉匠へのオマージュとして椅子から落下し続ける行為や楽器破壊や小麦粉散布によるアクションなど、ネオダダの系譜を想起させるシンプルかつ過激なパフォーマンスを継続しています。
現場を渡り歩き身体をはった実践をしてきた芳賀は、アカデミズムを前提とする近年のアート界の風潮とは別の出自を持つ、「野良の表現者」だと呼べるでしょう。本展でキュレーターを務める僕自身、同様に制度の外側から現在へと至った経歴を持つため、芳賀の「アートとの関係性」には深く共感していることを強調しておきたいと思います。

■ 展覧会の主題:「アーティストになる」というパフォーマンス

振り返れば、僕が初めて自分を「アーティスト」であると表明したのは、海外からの帰国時、入国カードの職業欄に「美術家」と記入した瞬間でした。Chim↑Pom結成から数年が経っていたものの、何者にもなれないまま過ごした20代の陰鬱の果てのその一筆に、“ついに自称した”という強い気まずさと覚悟を覚えたことは、今も忘れません。

芳賀が本展で行うのは、まさにその「アーティストになる」という行為そのものです。社会彫刻やウォーホル以降の半世紀を経て、ドクメンタ15などの動向も背景に、「誰もがアーティストになり得る」という可能性が認知される現在に至るまで、アーティストという存在は、美術史の中で特権性と民主化のあいだを揺れ動いてきました。
多くのアーティストは美大という環境に身を置き、展示を重ねる内に自らをアーティストと認識するようになります。しかし芳賀は、その成り行きに疑義を呈し、「なぜアーティストはアーティスト宣言をしないのか?」と問います。「アーティスト」とはそんなにニュートラルに、非特異的なものなのか——この問題意識にもとづき、芳賀は会期中に“自らがアーティストになる”ことを敢えて会見という形で宣言し、アーティストとは何であるかを身体的に体現します。
この問いの背景には、芳賀が育った美術制度の外側が、身近にアーティストがいる環境ではないという事情があるでしょう。「アーティスト」とは単なる役割以上の社会的概念であり、何か特異な存在性を持つ——その認識の差異は美術制度の境界線上でこそ、顕著に浮上します。

■ アーティストという“呼称”をめぐって

芳賀にとって「アーティストを名乗る」という行為は、アートという水脈・文脈から派生したWHITEHOUSEという支流に集まる人々との出会いに対し、自身の人生を重ね合わせ、新たに水を引いた更なる自身の支流に「名前を与える」行為のようなものだと言います。
さらに本展では、「アーティスト」という呼称そのものに、意図的なズレを導入することも試みます。社会的に規定されるアーティスト像と、本人が自認するアーティスト像——その差異が浮かび上がるよう、展示は構成される予定です。

本展は、芳賀菜々花が自らの身体を通して「アーティストになる」ことを実践する、初個展にして決定的なパフォーマンスとなります。WHITEHOUSEという、作家にとって特別な場所でのみ成立し得る、制度と野性の狭間から立ち上がる新たな問いに、ぜひご期待ください。

卯城竜太

芳賀菜々花 / Haga Nanaha

いま・なぜ・ここにじぶんがいるのか考えながらパフォーマンスしています。