SNSが身近に発達した時代を過ごす3名は共に、大きなプラットフォームによって個人の身体性 をオープンに晒す態度が過剰に要求され、匿名的な存在としてミーム化することが価値としてみ なされる環境に違和感を抱く。断絶した社会から持ち帰った事象を再生し小さなコミュニティを形 成することを「ネズミの小部屋」と形容し、ひそひそとした小さな声の主体が放つ潜在的な意志の 強さを主張する。
作家の主体や意図と組織的・構造的に紐づかれる関係が剥離した環境の構想から、鑑賞者自 身の身体や記憶との対話を促すことで理性や合理性に囚われない内的世界の問い直しが図ら れる。
自己をオープンにできないことを肯定し、身体性によって担保されてしまう通俗的な価値から自 己の意志や表現を掬う本展の実践は、大きな関係性の輪から離れることで結ばれる小さなコミュ ニティのあり方を共に考える機会を育む。