WHITEHOUSE

WH-013

GROUP[手入れ/Repair展]

2021.11.8.MON – 11.21.SUN

OPEN

13:00 – 20:00

CLOSE

TUE,FRI

手入れ:GROUP

戯曲:三野新

衣装:well

写真:高野ユリカ

音楽:涌井智仁

法律:飯野晃司

什器:藤村祥馬

グラフィック:田岡美紗子

キュレーション:涌井智仁

手入れ/Repair

床を剥がして建物の手入れ(Repair)をする。床下には真っ黒い土が見え、これが約60年間封じ込められていた地面だと気づかされる。人が集まるための物質的条件である地面は、手入れの解体と再構築に常に関わり、そのたびことに現れる。

不具合や動作不良に追いつめられた人間は、自らの身体とありあわせの道具を用いて、手入れをおこなう。不具合はふとした瞬間に生じ、そこに蓄積した時間をあらわにするものだ。手入れは、具合の悪さをさしあたり乗り切るために行われるが、それは同時に、対象が抱え込んでいる忘却された時間への介入でもある。居たくないところから逃げ出すにしろ、集まるところをつくるにしろ、居場所にまつわる不具合やトラブルは、地面に対する何らかの身ぶりや工作を通して解決されるほかなく、自らで選び取った場で生き通すための創造行為は、地面と身体の接面において様々な葛藤と工夫を生じさせる。

60年代のフーテン族、新左翼暴動事件、唐の状況劇場。90年代のダンボール村。現在のトー横キッズたち。新宿は断続的かつ局所的に、自治的な場の確保に向けた出来事が生じ続けている稀有な土地だ。しかし、居場所をつくるための地面との接点の新たな発明は、法の整備と取り締まりの制度へとプログラムされ、再帰的なものとして、繰り返し都市の構造に組み込まれてきた。集合し、現れるための形式は、即座に、「壊す」ための口実へ成り代わる。

この展示は、建物への物質的な介入と、建物が存在している土地の歴史や記憶への応答を、手入れというフォームのもと、ひとつながりの工程のなかで、入り混じった仕方で開示する試みである。展示室の床板を一旦すべて取り外してから、床下の基礎を補強し修繕した床板を取り付けるまでの一連の工程が、約二週間の会期を通して公開される。

露出した約60年前の地面が再び閉じられるまでのこの一連のプロセスのなかに、60年代から現在にかけて新宿で発生した5つの事件が、儀礼的な修復の身ぶりとして織り込まれる。都市空間での居場所の確保にむけた“危険”な身体はここで、「壊す」ための口実から、「直す」ための身ぶりへと転じる。

GROUP

この度WHITEHOUSEでは建築家コレクティブ「GROUP」による展覧会「手入れ/Repair」展を開催いたします。

“手入れ”とはすなわちそれまでを切断する介入のことです。不具合を起こした物、それを支える地面、そこに流れる時間、それらを一度棚上げし、文脈から引き剥がす行為として”手入れ”は存在しています。不具合や不良、事故はそのように強引な介入を通して、別の新しい身体を獲得していきます。

GROUPは、その特殊なコミュニケーションの形態でもある”手入れ”を、アートの新しいフォームとして提案します。新宿という場所で起きた数々の私/公の闘争の歴史を、建築と地面や、身体と記憶の関係として読み解き、そこに”手入れ“を行使していきます。そこでは過去の不具合は文字通り現在のものとして登場し、”手入れ”を通して新しいものとして甦ります。当然ながら、新宿ホワイトハウスもその対象となりますので、この数週間を通して一時的に解体される事となります。そして、多分新しく生まれ直すはずです。GROUPによる工程表がありますので、是非それを見ながら彼らの”手入れ”を追いかけていただきたいです。そして、”手入れ”というフォームの物理的な危険さと共に、建築家がアートギャラリーで展覧会をする事の意味や、建築と身体の本質的な折り合いの悪さも併せて体験していただけたらと思います。

GROUPはこれまで『海老名のスタジオハウス』、『浜町のはなれ』など、通常の建築の枠に留まらない多義的な建築アクションを試みてきたコレクティブです。

GROUPには我々がこのアートギャラリーを始める随分前から、WHITEHOUSEのプロジェクトに関わっていただいています。磯崎新の処女作である「新宿ホワイトハウス」を元の状態のままキープしながら、ある種「新宿ホワイトハウス」を読み替える行為として外構と庭の施工を行い、新しいアートギャラリースペースとしてWHITEHOUSEを立ち上げました。その方法論は彼らの言う”手入れ”を予言するようなものだったと今この文章を書きながら思い返しています。

この展覧会には通常の意味での搬入、施工、展示、解体、搬出はありません。この文章が書かれている今も展示は行われているし、施工も行われています。それらは常に進行しているのです。

床は開いています。地面に気をつけてご参加ください。

涌井智仁

工程表のダウンロードは以下から↓

GROUP

井上岳・大村高広・齋藤直紀・棗田久美子・赤塚健の5名をコアメンバーとした建築コレクティブ。2021年 結成。研究、書籍制作、設計・施工を同時に行う。 主な作品に『新宿ホワイトハウスの庭』、『海老名の スタジオハウス』、『浜町のはなれ』など。 主な受賞に、SDレビュー2019 奨励賞、入賞など。

井上岳|博士(工学)
1989 山梨県生まれ
2017 慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得退学 2014-18 石上純也建築設計事務所
2018- 東京芸術大学教育研究助手
2021- GROUP共同主催

大村高広|博士(工学)
1991 富山県生まれ
2020 東京理科大学大学院後期博士課程単位取得退学
2021- GROUP共同主催

齋藤直紀|博士(工学)/ 一級建築士
1991 群馬県生まれ
2016 東京理科大学大学院修士課程修了
2018 慶應義塾大学理工学研究科助教(有期、研究奨励) 2018- 東京デザイナー学院非常勤講師

2021 慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得退学 2021- GROUP共同主催

棗田久美子|一級建築士
1988 広島県生まれ
2013 慶應義塾大学大学院修士課程修了 2014-20 オンデザインパートナーズ 2021- GROUP共同主催
2021- 相模女子大学専任講師

赤塚健|一級建築士
1989 千葉県生まれ
2014 慶應義塾大学大学院修士課程修了 2014-日本設計
2021- GROUP共同主催
2021- 慶應義塾大学非常勤講師